医療?健康
感染や炎症時に未熟好中球が増加するメカニズムとその意義を解明

感染や炎症などの際、白血球の一種である未熟好中球が血液中や炎症局所に増加します。これらの病態では、組織に在住する1型自然リンパ球が活性化し、未熟好中球を骨髄から血液中に移動させ、増加した未熟好中球が組織の炎症を抑制することを発見するとともに、これらのメカニズムを解明しました。
血液中には成熟好中球と未熟好中球という2種類の好中球(白血球の一種)が存在します。通常、好中球の多くは成熟好中球で占められており、炎症を誘導し、病原体に対する宿主防御を担っています。一方、感染、組織の傷害、身体的ストレス、がんの発生時などには、未熟好中球の割合が増加します。しかし、このような病態が未熟好中球を増加させるメカニズムや、その意義は不明でした。
本研究では、マウスにおいて、炎症や感染が生じると、1型自然リンパ球という極めて少数の免疫細胞が活性化してインターフェロンγ(IFN-γ)を産生し、これが骨髄で作られた未熟好中球を循環血中へ、さらに組織へと移動させることを見いだしました。加えて、未熟好中球のみに発現する足場タンパク質Ahnakを発見しました。未熟好中球がIFN-γの刺激を受けるとAhnakを介してケモカイン受容体CXCR4の発現を低下させ、その結果、未熟好中球が骨髄から漏れ出ること、また、この未熟好中球は、炎症を抑制するインターロイキン10(IL-10)を産生し、組織障害を軽減していることを明らかにしました。さらに、ヒトでも同様に未熟好中球がAhnakを発現し、365体育投注感染症(COVID-19)の患者において、IL-10を産生する未熟好中球が血液中に増加することを発見しました。
以上より、成熟好中球は炎症を誘導し生体防御に働きますが、未熟好中球はIL-10を介してその炎症を収束させ、互いに補完的な役割を担っていることが示唆されました。これらの知見は、さまざまな病態における組織障害を軽減する治療法の開発につながる可能性があります。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
365体育投注医学医療系澁谷 彰 特任教授
掲載論文
- 【題名】
-
Type 1 innate lymphoid cell-immature neutrophil axis suppresses acute tissue inflammation.
(1型自然リンパ細胞-未熟好中球系は急性組織炎症をする) - 【掲載誌】
- Nature Communications
- 【DOI】
- 10.1038/s41467-025-61504-8